近年よく耳にする「働き方改革」の一環により、皆さんがこれまで抱いていた「派遣」のイメージと現在の「派遣」のイメージは大きく異なっているかもしれません。こちらでは皆さんが分かりやすいように働き方改革について触れながら、派遣についてご説明します。
皆さんが一度は耳にしたことのあるでしょう「働き方改革」とは、2016年頃から政府主導で推進されている日本企業の労働環境を大きく見直す取り組みのことです。
働き方改革の主な取り組み内容として、下記項目が挙げられています。
働き方改革は、労働者が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにする改革です。
現在の 日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要だと考えられています。
労働者が個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを政府は目指しています。
今回は「派遣社員」として働くことを検討している皆さんに派遣という雇用形態について、詳しくご説明します。
派遣会社(派遣元企業)と雇用契約を結び、別の企業(派遣先企業)で働く労働者のことを派遣社員と呼びます。派遣社員は、派遣先企業の指示の元で働きますが、実際に雇用者としての責任は派遣会社が負います。
一方、正社員や契約社員、パートタイマー・アルバイト等の場合は実際に働く企業と直接雇用契約を結びます。
「派遣社員」として働いた場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。こちらでは「派遣」といえば一般的にイメージされる 「有期雇用派遣(登録型派遣)」のメリット・デメリットをご説明します。
「仕事内容」「勤務地」「勤務時間」などを自分で選べることが派遣の特徴として挙げられます。登録した派遣会社へ希望条件を伝えることで、自分のライフスタイルに合った仕事に出会える可能性が高まります。
自分のスキル・レベルに合わせて、派遣先企業や仕事を選ぶことができます。
未経験からスタートしたとしても、派遣先で経験を積むことでスキルアップが可能です。
派遣は1つの企業にとどまらず、様々な企業・業界で働くことができる働き方なので視野が広がり、より自分に適した仕事が見つかるかもしれません。
派遣社員の中には、派遣先企業で評価され正社員に登用される人もいます。
最初から正社員として入社することは難しい大手企業や優良企業で働けることもあります。
派遣社員として働いている期間に「会社の雰囲気」「実際の仕事内容」等を正社員になる前に知ることができ、直接雇用後のミスマッチを防ぐことができます。
派遣先でトラブルや悩み事がある場合、派遣会社に相談することができます。
仕事内容に関することはもちろん、人間関係やその他で困っていることがあれば相談に乗ってくれる派遣会社が多いです。派遣会社により対応方法は異なりますが、派遣先企業と派遣社員の間に入りサポートしてくれます。
派遣の雇用契約は3ヶ月や6ヶ月ごとに更新される場合が多くあります。
そのため、派遣先企業の状況等により契約更新されないことも珍しくありません。
一方で自分に合わない仕事だと感じた場合、定期的に契約更新のタイミングがあるため「更新しない」ことの意志を伝える機会が度々あり、伝えやすいともいえます。
※契約更新がされない理由に派遣社員のスキル不足や勤怠不良等も挙げられます。必ずしも派遣先の事情での契約満了になるわけではありません。
派遣の多くは時給制のため、実際に就業した時間によって収入が変動します。
例えば年末年始や夏季など派遣先企業が長期休業になる場合は、収入が下がるでしょう。
ただし、派遣社員も有給休暇を取得することができるため、利用することで収入の安定につなげることが可能です。しかし有給休暇の日数には上限があるので計画的に利用することをオススメします。尚、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者は法律により年5日以上の有給休暇を取得することが義務付けられています。
派遣は雇用契約で定められた業務の範囲内で仕事を行います。また、重要な判断を伴う仕事を派遣社員に任せる企業は少ないです。そのため「責任ある仕事を任されたい」「キャリアアップしたい」等という方には不向きな働き方かもしれません。
業務範囲を広げたい場合は、派遣会社に相談すると交渉してくれることもあり、自分がしたい仕事に携われる場合があります。
一言で「派遣」といっても、様々な種類があります。同じ雇用形態であってもそれぞれ異なる特徴があります。
派遣先企業で働く期間のみ派遣会社(派遣元企業)と雇用契約を結ぶ働き方です。
時給制となっていることが多く、働いた時間に対してのみ給与が支払われる仕組みです。
雇用期間はあらかじめ定められており、3ヶ月や6ヶ月ごとに雇用契約を更新する場合が多いです。 また有期雇用派遣は「仕事内容」「勤務地」「勤務時間」などを自分で選べることが特徴です。
派遣会社(派遣元企業)と期間の定めのない雇用契約を結ぶ働き方です。(実際には「定年までの雇用契約」であって「無期限の雇用契約」ではありません)
派遣先企業での就業期間が終了したとしても、派遣会社との雇用関係は続いているため、派遣会社の指示により次の派遣先企業(配属先)が決定されます。
この場合、有期雇用派遣のように「仕事内容」「勤務地」「勤務時間」などを選べない場合がほとんどです。条件やタイミングによっては就業できる派遣先がない状態となることもあります。この状態を「待機」と呼び、この期間中は休業手当が支払われます。
将来の派遣先企業での直接雇用を前提として、一定期間(最長6ヶ月)派遣社員として働く形態です。
派遣期間が終了するまでに「紹介」が行われ、本人と派遣先企業の双方が合意に至れば、派遣期間終了後に正社員または契約社員として派遣先企業に直接雇用されます。
直接雇用されるまでの期間は、有期雇用派遣(登録型派遣)と同様に派遣会社(派遣元企業)との間で雇用関係が結ばれます。
上記のように、雇用形態によってそれぞれのメリット・デメリットがありますが、派遣社員である以上、派遣会社と雇用契約を結んで、派遣先企業で働くことには変わりがありません。
働くうえでは社会人として雇用契約に基づいて職場ルールを守り、担当業務をしっかりとこなすことが求められます。
冒頭でお話したように、働き方改革の一環として「正規雇用労働者・非正規雇用労働者 不合理な格差の解消」を実現するため、2020年4月に労働派遣法が改正されるとともに 同一労働同一賃金が施行されました。
同一労働同一賃金とは
同一企業内での雇用形態の違いによる不合理な待遇差の解消を目指すものです。
同一企業内で仕事内容や責任の範囲・負担などが同じであった場合、雇用形態の違いによって待遇差を設けるのではなく、労働者を適正に処遇する制度です。
同一労働同一賃金の導入により、派遣社員への待遇はこれまでと大きく変わってきています。
具体的には…
これまでは、派遣社員へ交通費を支給する派遣会社は少数だったかと思います。
同一労働同一賃金の導入により、派遣社員へも交通費を支給する派遣会社が多くなりました。
賞与・退職金については、派遣会社(派遣元企業)がどの運用方式を選択しているかによって金額や支払い方法が異なります。
これまで派遣社員の昇給制度を設けていない派遣会社がほとんどでしたが、同一労働同一賃金の導入によってスキル・能力が向上した派遣社員へはそのスキルアップ度合により昇給する派遣会社が増えました。
教育訓練と福利厚生の待遇について
教育訓練と福利厚生(施設)については、派遣先企業の正社員(=正規雇用労働者)と同様の待遇で受けられる場合が多くなりました。
もともと2015年に改正された労働者派遣法により、派遣会社(派遣元企業)には派遣社員のスキルアップを目的とした「キャリアアップ支援制度」の実施が義務化されています。
同一労働同一賃金により、派遣社員がキャリアアップ支援制度とは別に、同一労働同一賃金によって、派遣社員が派遣先企業の正社員と同様の教育訓練を受けられるようにする企業が増えました。
派遣先企業に福利厚生施設(食堂、休憩室、更衣室、物品販売所、診療所など)がある場合、派遣先企業の正社員と同様に派遣社員も利用できるようになった企業が増えました。
同一労働同一賃金の導入により、皆さんがこれまで抱いていた派遣のイメージが少しは変わったかと思います。「これまで」と「現在」の違いをより分かりやすいように図でご説明します。
これまでは正社員(=正規雇用労働者)だから、派遣社員だからと区別ことされることが多く「正社員=安定」であることのメリットを強く感じることが多々ありました。
しかし現在は、働き方改革による同一労働同一賃金などの導入で正規雇用・非正規雇用の違いにより生じていた不合理な格差は解消されてきています。
これからは正社員という雇用形態にとらわれるのではなく、派遣社員としての働き方も視野に入れ皆さんの「自分に合った働き方」を探してみるのはいかがでしょうか。
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